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Report9 Kurume City

一人ひとりの関心を高める安全衛生の取り組み 久留米市

取り組みのポイント

  • 「心の定期健康診断」として毎年1回全職員に対するメンタルヘルスチェックを実施
  • 職員アンケートの意見を反映した使いやすいメンタルヘルスの手引きを作成
  • 第1種衛生管理者資格取得を推進し100名を超える有資格者を養成

久留米市は、国の動向やメンタルヘルス不調者の増加傾向に対応するため、平成22年2月に市のメンタルヘルス事業の指針となる「久留米市心の健康づくり計画」を策定し、この計画に基づく職員全員に対するメンタルヘルスチェックや全所属長へのアンケートを踏まえたメンタルヘルスに係る手引きの作成など、積極的にメンタルヘルス対策を実施しています。こうして、職員一人ひとりの関心を高めながら安全衛生の向上を図る、久留米市の取り組みを紹介します。

1 毎年1回全職員に「心の定期健康診断」を実施

市では、行政ニーズの増大等により業務の質・量が増大する中で、平成15年度に精神疾患による病気休暇取得者(新規)が初めて2桁となった後も増加傾向が続きました。一方、国は指針・マニュアルの整備等によりメンタルヘルス対策を強化する中で、平成18年3月には事業主に「心の健康づくり計画」の策定・実施を求めた指針を公表します。

こうした内外の状況に対処するため、市は平成22年2月に「久留米市職員の心の健康づくり計画」を策定しました。この計画は、市が実施するメンタルヘルス事業の指針となるもので、基本目標の一つに「平成22年度に職場におけるストレスを強く感じる人の割合を把握し…。」と定めています。このため、市は平成22年度から心の定期健康診断」として、年1回全職員に対してメンタルヘルスチェックを実施しています。

人事厚生課共済労安チームの田中 秀典氏は「平成12年度から人事異動者等を対象にメンタルヘルスチェックを実施してきました。しかし、年1回全職員が身体の健康診断を受けているのと同様に、メンタルヘルスについても定期的な全職員のチェックが必要と考えました。そこで、計画に基づき『心の定期健康診断』というネーミングで、年1回全職員に対してメンタルヘルスチェックを実施することにしました。」と経緯を語りました。

田中氏

「心の定期健康診断は、計画の目玉事業でもありました」と語る田中氏

「心の定期健康診断」は毎年5月、全職員に「職業性ストレス簡易調査票」を配付して実施されます。各職員は調査票を提出し、個人結果は7月に返されます。診断結果で職場でのストレスが高いと診断された職員には、臨床心理士による個別面談が実施されます。

この調査票の提出率及び個別面談の受診率は、身体の定期健康診断が労働安全衛生法令により原則全員受診であることと同様に考え、100%を目標に実施されています。調査票提出率は平成23・24年度とも100%となり、また、例年職員の1割程度が対象となる個別面談の受診率は、年々増加して平成24年度は98%となりました。田中氏は「職場でのストレスが高いとされた職員は、臨床心理士の個別面談を受けますが、臨床心理士の判断により、医療機関への受診につながることもあります。長期的には、自分のメンタルヘルスに対する関心が高まることで、セルフケアの重要性が理解され、不調者の減少につながると考えています。」と効果を語りました。

2 アンケート意見を反映した使いやすいメンタルヘルス手引きの作成等

市は「心の定期健康診断」の実施によりセルフケアの充実を図りましたが、心の健康づくり計画策定当時、所属長に対するラインケアのマニュアルはありませんでした。このため人事厚生課はマニュアル作りに取り組みますが、できるだけ所属長が使いやすいものにしたいと考え、平成24年7月に全所属長に対してアンケート調査を実施し、ラインケアに対する所属長の要望等を把握しました。そして「メンタルヘルスの基礎知識が少ない」「不調者への対応が分からない」等要望が多かった事項を取り入れて、精神的な疾病の態様など基礎的な知識から、相談の受け方や専門機関へのつなぎ方等、管理監督者が行う対応を8つにまとめて分かりやすく示した手引きの原案をまとめます。その後、精神科産業医や市保健所からの助言を受けたのち、各安全衛生委員会を統括する「久留米市安全衛生審議会」の審議を経て、平成25年7月に「管理監督者のためのメンタルヘルスの手引き」を発行しました。

この手引は、アンケート意見を踏まえて細部にわたり実務で使いやすい工夫もこらされています。人事厚生課共済労安チーム課長補佐の本松 寿史氏はこう語ります。「アンケート意見では、初めて不調者を抱えた所属長が、色々な書類の書き方に苦労したことも書かれていました。それで、書類の書き方など事務手続きにおける留意点も書き込んで、できるだけ実務で使いやすい手引きになるよう心掛けました。

本松課長補佐

「当市にあった手引きができたと思います」と語る本松課長補佐

この他、平成22年度から庁内イントラネットにセルフチェックシートを掲載し、毎月10日をセルフチェックの日と定めてチェックを促す等、心の健康づくり計画に基づきメンタルヘルス対策の充実を図っています。人事厚生課長の楢原 孝二氏は「平成20年度に中核市に移行し、県から保健所が移管されましたので、産業医に加えて市保健所の医師や保健師とも連携をとりながら、メンタルヘルス対策に取り組んでいます。平成24年度に初めて当課に保健師が配置されましたので、今後は定期健康診断の分析結果と関連させた対策もしたいと考えています。」と今後の抱負を語りました。

楢原課長

「管理職のメンタルヘルスへのマネジメント
力を上げたいです」と語る楢原課長

柏原氏

人事厚生課に初めて保健師として
配置された柏原 理恵氏

計画に基づくメンタルヘルス対策

年度 内  容
平成21年度 「久留米市職員の心の健康づくり計画(基本計画)」及び「同計画(実施計画)」策定
平成22年度 庁内イントラネットに「セルフチェックシート」掲載
毎月10日を「セルフチェックの日」としてチェックを啓発
心の定期健康診断」実施
平成24年度 人事厚生課共済労安チームに初めて保健師配置(正規職員)
「安全衛生委員会事務局担当者連絡会議」開催
平成25年度 「管理監督者のためのメンタルヘルスの手引き」策定

3 第1種衛生管理者資格取得支援等の取り組み

常時50人以上の労働者を使用する事業場は、労働安全衛生法により衛生管理者の選任が義務付けられていますが、人事異動等により有資格者不在の問題が生じることもあります。しかし、法で義務付けられた衛生管理者の選任は、事業場の安全衛生管理体制の基礎となるものです。そこで、市では毎年度衛生管理者の資格取得に要する8名の経費を負担して有資格者を養成し、選任に必要な有資格者を確保しています。

人事厚生課共済労安チームの鹿毛 久美子氏は「毎年度全部局に依頼し、各部局から適任者を推薦してもらっています。推薦が出そろった状況をみて、必要性の高い部局を優先して外部の養成講座を受講し、資格取得をしてもらっています。」と養成の流れを語りました。

鹿毛氏

「有資格者不在の事業場がないようにしています」と語る鹿毛氏

また、一般事務の事業場においては、衛生管理者は第2種衛生管理者免許を有する者等で足りますが、労働安全衛生規則には、農林畜水産業、水道業、医療業や清掃業等危険・有害業務のある事業場では、第1種衛生管理者免許を有する者等から衛生管理者を選任することが定められています。このため市は、部局を越える人事異動に備えて、第1種衛生管理者の資格取得を推進しており、市全体の第1種衛生管理者資格取得者は103名(職員全体の約6%)となっています(平成25年4月末)。

今後は、衛生管理者のさらなる資質向上を推進するため「衛生管理者会議」の開催も検討しています。市は、この会議によって安全衛生管理体制の一層の充実を図るとともに、衛生管理者と健康管理部門である人事厚生課との連携を強化することで、メンタルヘルス不調者の早期発見・対応もさらに進めようとしています。

アドバイザーより一言

アドバイザー/宮田氏

メンタルヘルス対策で作成された管理監督者の手引きは、基礎的な知識からケア等までが分かりやすくまとめられ、不調者に初めて対応する所属長にとても役立つものです。

衛生管理者の資格取得支援は、継続的かつ計画的に各部局に働きかけ取得者充足に配慮しています。資格取得者数が多いため、人事異動等による資格者配置の問題にも対処できています。

各安全衛生委員会を統括する安全衛生審議会は、メンタルヘルス対策など各安全衛生委員会共通の取り組みについて調整機能を果たす役割をもっています。そのほかの取り組みとして、過重労働防止では、健康診断の実施や所属長に「原因と改善策」を書面で提出させる等、一歩踏み込んだ施策が取られています。

今後は、安全衛生委員会・安全衛生審議会の活性化、安全・衛生管理者の資質向上につながる任命時の研修・教育の充実等を検討ください。

中央労働災害防止協会 九州安全衛生サービスセンター
安全管理士 宮田 昭

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City profile

福岡県久留米市

久留米市位置

  • 面積 229.84km2
  • 人口 306,080人
    (2013.11.1現在現在)
  • 人口密度 1,332人 /km2

見どころ

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久留米市イメージキャラクター

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〒830-8520
福岡県久留米市
城南町15-3
取材先:人事厚生課

職員数1,873人
【内訳】
一般行政 1,368人
教育 277人
公営企業等 228人
(2013.4.1総務省調査)

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